歴史ある地に紡がれる住まいに相応しい「継承」をテーマにしたプランニング。
「広尾三丁目マンション」は、かつて多くの名士に親しまれた歴史ある地を受け継ぐ集合住宅。
その建築思想に共鳴し、従前の住まいの形状や部材を活かしながら、色や質感、細部の設えにこだわり、
土地の由緒に呼応する品位と現代的な美しさが共存する住まいへとアップデート。
当社(野村不動産)の朝倉と、設計デザインを担当する外部パートナーの武井さんに、その考え方と手法について伺いました。
Date 「広尾三丁目マンション」
古くは「旧 澁谷区羽澤町」として知られる、広尾三丁目の丘に佇む低層3 階建て全114 戸のレジデンス。大正から昭和初期にかけて、鉄道院総裁、東京市長、貴族院議員などを歴任した中村是公(なかむらよしこと)邸跡地である約8,000㎡の広大な敷地に「再生」された邸宅。各界の名士も訪れた料亭時代の石畳や景石、既存樹を可能な限り残し、歴史と由緒を継承している。
設計精度の高い空間を活かしながら、
カラーリングや素材を変更し、
現代に相応しい住まいへ更新。
朝倉:
「広尾三丁目マンション」は歴史ある土地を受け継ぐ邸宅として、空間設計はとても精度の高いつくりになっていました。
ですので、室内の形状は極力活かしながら、時代の感覚に合ったカラーリングや豊かな質感を持つ素材を採用した
インテリアに変更し、より現代に相応しい住まいへと更新することを考えました。
そのような方向性に基づき、機能性の向上はもちろん、見た目の美しさにこだわったのがキッチンです。
背面の食器棚も含め、天板や袖壁には「ロッソバジリオーレ」という表情豊かな黒い大理石を採用し、
収納などの面材も明るい色からシックなブラウンに変更しました。
水まわりというよりもインテリアの一部として捉え、空間全体のアクセントとなるようなコーディネートに仕上げました。
隅々にまで
こだわりが尽くされた集合住宅。
そのデザインや品質を
住まいの記憶として継承。
武井:
「継承」というコンセプトのひとつの象徴としてLDKに入るドアに格子を採用しました。
かつてこの地にあった料亭の建築意匠を踏襲したもので、マンションの共用部にも同じデザインが採用されています。
古くから受け継がれる格子のデザインによって、少し閉鎖的だった廊下にリビングから差し込む自然光と夜はライティングによる光と影の演出効果をもたらしました。
また、居室などのドアはレトロなイメージがあったので、全て取り換える方針でした。
しかし精査してみると、天然木で仕上げられた良質な製品だったので、色調を変えた塗装を工場で施し再設置することにしました。
良質な素材は時が経過しても変わらない価値があり、ブラッシュアップされて同じ住まいに再び帰って来ました。
一つ一つの素材や
空間の細部にまでこだわり、
「ノイズ」を抑えながら、
端正な美しさを演出。
武井:
空間を視覚的に遮る物を「ノイズ」と呼んでいます。
「ノイズ」を少なくすることで、端正な美しさと一つ一つの素材の調和が保たれるようになります。
例えば、廊下に混在するドアはその枠とレバーハンドル、足元の巾木の素材を統一し、スイッチ・コンセントプレート類の色調も揃えることで調和を図りました。
また、従前に使用されていたドアの蝶番を、閉めた時に見えない隠し蝶番に変更し、足元の巾木は低めにしてより天井が高く見えるように工夫しています。
洗面室の床はフロアタイル貼りから磁器タイル貼りに変更することにしました。
そのために、仕上げ材の厚みの違いから生じる段差は、下地材から組み直してフラットな床になるよう配慮しています。
また、洗面台の壁面には天井側に小さい梁が露出していましたが、空間として差し障りがないと判断して壁をふかし、すっきりした空間に仕上げています。
床には挽板を使ったオーク材のオリジナルフローリングを採用しています。
その表面は日本の伝統的な加飾法の浮造りが施されており、その凹凸感は優しい足触りや、光の反射を抑える効果があり、生活空間に温もりと落ち着きを演出しています。
また、間接照明のあるリビングの折上げ天井にはアクセントクロスを使い、印象を変えると共にライティングの明暗をより強調した、生活空間としての彩りを加えています。
「継承」というテーマのもと、
残すべきものは残しながら住まいの価値を更新。
朝倉:
野村不動産のリノベーションは、その住まいを取り巻く様々な要件を分析し、一邸一邸に最も相応しいプランニングを追求しています。
「広尾三丁目マンション」では立地や建物全体に息づく「継承」という建築思想に共鳴し、従前の住まいを生かしたアップデートを検討しました。
これは我々野村不動産が掲げるサスティナブルの考え方とも合致するもので、
単純に古いものを新しいものに変えるのではなく、社内の基準を満たしながら、残していく価値のあるものは残し更新していくという思想を鮮明にした取り組みとなりました。
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